近代修養の巨人、常岡一郎師の中心思想を学びます。 


by ryukoin

カテゴリ:中心をめざして( 5 )

『中心をめざして』⑤

晩秋の一日、私は綱渡りを見た。高い一つの綱を、曲芸師がわたるのである。
恐ろしい。見ていてもゾッとするほど危ないことである。

歩き出した。綱は少しゆるんだ。
見上げると一本の傘を手にして、高い綱の上に立っている。
彼はもはやその綱の上に這うことも出来ない。かがむこともできない。

絶対絶命の彼は、何をたよりとして向こうまで歩いていくのであろうか?

見つめると彼の目はいま、彼の足や手や観衆の叫びや、
そうした身近の一切のものからすっかり切り離されている。
そうして、ただ一つの自分の離れたはるかの動かぬものを
中心として見つめて歩くのである。

はるか彼方の変わらぬものに心のすべてを吸い取られている。
そうして自分を忘れきって歩くとき、あの恐ろしい絶対の中から、
さも自由に軽く都合よく歩み続け得られた。万衆の魂を冷やし、
人々の心をつかみ、目を吸い取ってしまっている。

動かない中心を目ざして、ひたすら歩み続けるもののみ、
明るく生きることが出来るのである。

一点に心のすべてを吸い取られた彼は、同時に万人の人々の
目も心も歓声も一点に吸いつけているのであった。

われわれは来るべき時代のやめに、現在の手近な問題のみに
囚われてはならない。

人事百般の中から、動かない中心を目ざしてつらぬく何ものかを
求むべきであろう。
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by ryukoin | 2006-12-01 09:47 | 中心をめざして

『中心をめざして』④

人間は自分の心を人に知って貰うために話す。
心を知って貰うほどうれしく、心の安らかなることはない。

不平に充ちた人、世を呪う人ですら、よくその心を汲みだせる。
聞いて理解してやれば安らかになる。

心を知って貰う嬉しさを思えば、それはまた、
真実の親さまの心をしるためにつとめねばならなくなる。

そうした宇宙の親なる大きい慈悲と、
理の心を知らねばならぬ時代が歩みよってきた。
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by ryukoin | 2006-11-28 08:13 | 中心をめざして

『中心をめざして』③

いま見る雑然たる社会、人生の中に、いま聞こえる人の声、
社会の中にじっと見つめれば、そこに正しい統一を見出すのである。

正しく、注意深く動いて止まぬ偉大なものの温かい手を、
人は感じるのではないか。

呪い、煩い、あせる人々よ、それはあなたの見つめ方が浅く、
皮相であるのではないだろうか。
心が乱れているのではないだろうか。
こう教え導く声が聞こえてくる。

心の眼を開くとき、この世はあまりにも安らかな親心に包まれた不断の楽園である。

人間が誤解と、自棄と、呪いと、恨みと、焦燥を投げつけて行く時も、じっと永遠の手を伸ばし、慈愛の子守唄を口ずさむ母の声が、心の耳に入ってくるのである。
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by ryukoin | 2006-11-27 20:37 | 中心をめざして

中心をめざして②

現代人はあまりにも形あるものを摑むことにあせっている。

よりよき生活のためにということよりも、
たしかな心のやすらかさを摑むために働くべきではなかろうか。

生活の安定を求める前に、生命の安定、心の充実のために、
一日一日を捧げて行くべきではないだろうか。

己れをささげてゆく生活の中に感激を見出す人は、
安らかな心とうれしい生活とに包まれている。
感激に輝く眸をもった人々を見ることは、なんという心強さであろう。

生きて行く上に心からの喜びを身を以って摑まねばならぬ
時代が来たのではないかと思う。

つづく
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by ryukoin | 2006-10-20 07:54 | 中心をめざして

中心をめざして①

『中心をめざして』 この本は常岡先生の初めて出版された著作です。
先生は当時32歳で1931年のことです。
通計6万部発行され、ここから中心の活動がひろまりました。

少し内容をご紹介したいと思います。

(写真は昭和35年10月10日の復刻版)

序にかえて

やがて来るべき時代の人々のために、現代の人々は何を準備してやらねばならぬのであろうか。
人の親は、その子供と子孫のために、どうしたものをつくっておかねばならぬのであろうか。

一瞬も止む時を知らぬ宇宙の歩み、文化の進み、目まぐるしい
世相の変転に思いをなげるとき、何人もただわが人生の歩みのいかに小さく、いかに果かなく、かつのろいかを思わずにいられないだろう。

そして心ひそかにあせるのである。

きのう摑(つか)んだものが、きょうはすでに失われていくその姿を見つめるとき、人はもっと永遠なるものを願い、限りない生命に触れたものを求めるのである。

つづく
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by ryukoin | 2006-10-19 07:47 | 中心をめざして